生活保護を受けはじめ、自己破産したオレはさすがにまったく稼げない音楽配信なんかやってる場合ではなくなっていたが、クレジットカードの借金が帳消しになったことで、夏ほど切迫した状況ではなくなった。
とはいえ生活保護費はほんとにギリギリ生活出来るか出来ないかぐらいの金額で、月2万くらい掛かるタバコを辞めないと足りず、収入を得る必要があった。40歳で音楽を卒業するつもりでいたこともあり41歳になる10月で音楽はいったん卒業してロゴデザインの仕事をすることにした。
もともとは8月に公開した「戦場のヒマワリ」(→パート29)で卒業するつもりでいたが、40歳になってしまったことや、生活保護になりカードも使えなくなったことによって喪失感に襲われ、鬱や不安の症状が悪化したため、音楽を辞めると喪失感が一層強まりそうだったので秋のうちは音楽を続けることにした。
ずっと形にしたいと思っていた秋の曲が数曲あり、アコースティックなギター曲「Wing Station」と、ジャズとインディー・ロックを足したような「Night City」を録音した。
「Wing Station」は23歳の時(2004年)に本当の自分を隠して無理にカッコつけながら勤務していたバイト先の女の子とちょっと仲良くなっていた時期に書いた、人肌恋しくなる秋っぽい雰囲気の曲。その女の子と付き合って童貞を捨てる妄想をしていた。出会い目的で大きめな公園に行ってあれこれ妄想に耽りながらこの曲を弾いたりもしていて、恋愛したくてたまらなかったがその夢が叶うことはなかった。出会い系にも手を出したが若かったオレはサクラに踊らされただけだった。
歌とコーラスも入れたかったが時間がかかるしスタジオ代も節約したいのであきらめた。ギターだけでも十分いい雰囲気の曲なためアコギだけで制作した。
当時恋愛妄想に耽りながらこの曲を弾いていた公園に行き、変態な自分を隠して爽やかぶりながらギター動画を撮影した。
「Night City」は2017年の10月(36歳)に作った曲で、秋冬の夜に都会の街中で感じる孤独感を表現している。暖かさと冷たさが混ざっていて、お気に入りの曲の一つでもある。
もともとの曲名は「買い物」で、作曲当時に作ったデモがRPGなんかに出てくるアイテムショップのBGMっぽく聴こえたことに由来している。
「Wing Station」同様この曲も歌入れを断念したが、BGMっぽい雰囲気があるから歌無しでも問題無いという考えもあった。
音楽制作に疲れてしまった上に、はやく音楽を卒業して金を稼がなくてはいけなかったこともあり急ピッチで制作を進めた。凝ったエフェクトやドラムパターンも必要無い曲だったのでそこまで時間をかけずに済んだ。歌も無く、ギターもiPadに直接繋げて録れるエレキなのでスタジオに行く必要もなかった。
動画もギタープレイで魅せる曲ではないので無料の画像・動画素材を使って1日で制作した。
この2曲の作業中も「こんなことやってていいのか」という焦燥感に駆られていて、なかなか作業に取り掛かれなかったり集中出来なかったりしていた。もともと何かの作業に取り掛かるまでに時間がかかるADHDのオレだが、音楽など好きなことに関しては割とすぐに過集中モードに入ることが出来ていたが、40になってからは集中力もやる気も低下し、ぼーっとして取り留めのない思考や妄想、過去の思い出に耽っている時間が増えていた。
2019年に死にきれずに「何かをこの世に残してから死にたい」と思って創作活動をしてきたが、40過ぎてもういろいろと現実を見ざるを得なくなり、再び死にたい気持ちも強まり「何もかも投げ出して今すぐ自殺しよう」という、これまでの人生で何度も体験してきた衝動に駆られることが多くなっていった。